著者 :西根羽南
イラストレーター:鳥飼やすゆき
レーベル :夢中文庫アレッタ
出版社 :夢中文庫
出版年月 :2023年7月
ジャンル :TL、ファンタジー
ヒーロー:乙女ゲームの攻略対象。ヒロインの好みの声をしている。
ヒロイン:転生者。悪役令嬢。何度も断罪されて死にループを繰り返している。
Hシーン : 無し
あらすじ
フィリーネは気がついたら乙女ゲームの世界に転生しており、悪役令嬢として断罪されようとしていた。目の前には婚約者の王子とその腕にすがりつくゲームのヒロイン。毎回殺され、ループすること二桁。嫌気がさしていつもと違う行動を取ったらいつもと違う時間にループし、そしてそこには王子の顔をした従者がいて・・・?
ネタバレあり感想
この作品は今まで読んだ転生もの、悪役令嬢もの、ループものの中で1、2を争うくらい好きな作品になりました。
ヒロインのフィリーネは転生者です。
ある日突然、この世界が乙女ゲーム「四つの指輪」の世界であり、自分がその中の悪役令嬢にであることに気づきます。
そして婚約者だった第一王子をゲームのヒロインである男爵令嬢に奪われ、婚約破棄されて断罪されて牢に入れられて殺されてしまいます。
といっても物語スタート時点で既にループすること20回以上。
なんでこんなに毎度毎度死んでいるかというと、彼女は王子であるジークの声、声優ぬーさんの声が大好き過ぎて、自分が断罪されるそのセリフにすら「蔑みの混じった冷たい詰問口調最高」とうっとりしている間に、毎回あれよあれよと死んでいるのです。
これを彼女は「うっとり死」と呼んでいます。
もちろん、彼女も毎回流されているわけではなく、無実を訴えたりしているのですが信じてもらえない。
幸い、死ぬ時の苦しみの記憶はないけど、男爵令嬢の嘘に毎回騙されて断罪する王子の有り様にさすがに嫌になった彼女は、死ぬ前にいつもと違う行動を起こします。
やってやったぜ、と思いつつ死んで、またループして目覚めたところ、いつもと違って王子と婚約する前の時間に戻っていました。
しかも部屋には自称精霊。
極めつきには屋敷内に「明らかに王子と同じ顔と声をした」眼鏡の美少年・従者エルトルの存在が。
「え、ジーク殿下ですよね?」
「何の話でしょう」
絶対に「エルトル=ジーク」でしかあり得ないのに、エルトルも父もメイド達も否定します。
せっかく婚約前に戻ったんだから今度こそ王子とは縁を切って幸せになってみせる、と意気込んでいるのに、そばに張本人。
しかも、今まで散々「うっとり死」させられてきた推しの声。
今度は「ときめき死」しそう。
そんなわけでフィリーネは必死で従者をあの手この手で解雇しようとするのですが、上手くいかない。
従者になってまでそばにいるジークの思惑とは・・・?というところが話の謎なのですが、
それはさておき、フィリーネが毎度毎度、推しの声にうっとりしては「ハッ」として抗おうとしているのが面白いんですよね。
「この声のためなら死ねる。いや駄目だ、今度こそ生き延びるのだから。」
「この声になら滅多刺しにされて死んでもいい。いやいや、駄目だ、既に何度も死んでいるのだから。」
ずっとこんな調子で毎回推しの声を絶賛してます。可愛い。
フィリーネもジークのことが嫌いになったから拒否しているのではなく、今までの経験から裏切られまくっているので、さすがに今度こそ違う未来を掴もうとしてるのですが、ジークは従者のふりをしてまで「フィリーネを守る」と側から離れようとしません。
「そうは言っても結局はゲームのヒロインである男爵令嬢のことが好きになるんでしょ」とフィリーネが諦めの心を持っているのが切ないです。
でも基本コメディなので暗い雰囲気はないです。
しかもフィリーネが前向きでウジウジしてなくて良いヤツなんですよね。
男爵令嬢がメッチャ嫌なヤツなんですが、彼女の思い通りにさせまいと反撃する姿が痛快です。
フィリーネはループから逃れて幸せを掴めるのか、応援したくなっちゃうラブコメストーリー、オススメです!
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