著者 :蒼磨奏
イラストレーター:小路龍流
レーベル :ロイヤルキス
出版社 :ジュリアンパブリッシング
出版年月 :2020年5月
ジャンル :TL、ファンタジー物
ヒーロータイプ:周辺国との戦争で名を挙げた英雄、表情は固く怖いが、優しい
ヒロインタイプ:家族を失った精神的ショックで目が見えなくなった、控えめだが芯は強い
Hシーン :有り
あらすじ
ヘーゲンブルグ侯爵であるリヒターは数年前に終結した戦争で、部下をかばって敵国の捕虜となった英雄として扱われているが、顔に残った大きな傷のせいで遠巻きにされている。普段は社交から距離を置いているが、久しぶりにとある夜会に出席した際、壁際の花となっている一人の女性に目をとめた。それは、馬車の事故で母と兄を亡くし、精神的ショックから視力を失ったと噂の伯爵令嬢のヴィオレッタだった。彼女の亡くなった兄がリヒターの友人で、生前「妹と結婚させてやってもいいぞ」と話していたことなどを思い出したリヒターはヴィオレッタに結婚を申し込むことにするが・・・
ネタバレあり感想
視力を失った令嬢と頬に傷のある侯爵の恋物語です。
ヴィオレッタ視点とリヒター視点が入れ替わりつつお話は進んでいきます。
上のあらすじはリヒター視点ですが、ヴィオレッタ視点で書くとすると、ヴィオレッタは母と兄を失った馬車の事故が自分のせいだと思っていて、そのショックで視力を失っています。
妹は結婚し、父は後妻をもらい、適齢期を過ぎつつあるヴィオレッタは肩身が狭く、家にも居場所がありません。
夜会に出席するも、目が見えない令嬢として好奇のおしゃべりの的になるだけ。
そんな自分と結婚したいと言ってくれる人が現れ、これで家族に迷惑をかけないで済むと了承します。
侯爵家に着いてリヒターと対面し、ヴィオレッタは彼のハスキーボイスに聞き惚れます。
目が見えない分、耳が良いヴィオレッタは彼の声が性癖ドンピシャだったのです。
その後、結婚式を挙げ、初夜に至るんですが、私は目が見えない女の子(目隠しとかじゃなく)のベッドシーンを読むの初めてで興味深かったですね。
目が見えなくて初めての行為だったら、覚悟してても結構怖いだろうなぁ。
いきなりどこ触られるかわからないし。
でもヴィオレッタ的には、それ以上に耳元で囁かれるリヒターのハスキーボイスにドキドキしすぎてしまって、挙動不審になってしまいます。
「嫌がっているのか」と不快感を表す彼に、正直に「声が素敵なのでドキドキしてしまう」と伝え、初夜はうまくいくんですが、その後、リヒターに度々声責めをされます。
他にも目が見えないからならではのシーンが色々あるんですけど、リヒターがこっそりヴィオレッタを観察しているシーンが何度かあり、リヒターの視線に愛情(というかヴィオレッタへのベタ惚れ)が感じられます。
母と兄を死なせてしまった負い目や目が見えないことから「自分のような者」と言いがちだったヴィオレッタが、リヒターとのやり取りで生きることについて前向きになっていきます。
終盤、波乱もあるんですが、互いへのしっかりした愛情で乗り越えて熱々で終わります。
最後のベッドシーンも濃ゆくてリヒターがしつこくて非常に良きです。
チャラチャラ(?)してない、しっとりとした恋物語が好きな方はぜひ!