著者 :栢野すばる
イラストレーター:水野かがり
レーベル :チュールキス
出版社 :ジュリアンパブリッシング
出版年月 :2019年2月
ジャンル :TL、現代物
ヒーロータイプ:完璧な御曹司だがヒロインへの執着がすごい
ヒロインタイプ:若くして家業を継ぎ苦労している。変質者引き寄せ体質。
Hシーン : 有り
あらすじ
麻子は25歳。大学卒業と同時に今にも潰れそうな家業の玩具販売会社を継ぎ、社長として苦労している。取引先からもパワハラ&セクハラされ、心身共に疲弊している彼女の元に、3年前に別れたはずの元カレ・雄一郎がやってきた。10億の個人資産を持って。「お前と会社の借金、全部俺が払ってやる」拒否しても諦めない雄一郎の引力に麻子は飲み込まれていき・・・
ネタバレあり感想
2~3年ぶりに再読しました。
当時はあまり自分に刺さらなかった・・・というか、どうやら2人の関係性が呑み込めなかったらしいです。
若干ストーリーも忘れていたので、新鮮な気持ちで改めて読んでみたら面白かったので、今回取り上げることにしました。
麻子と雄一郎は高校から大学にかけてお付き合いをしていました。
雄一郎は大企業のオーナー一族の長男で、容姿も端麗、頭脳も明晰の非の打ち所がない男。
一方、麻子は父が早くに亡くなり、大学卒業と同時に、病気がちの母から倒産しそうな玩具販売会社を受け継いでいる状況。
学生の頃ならともかく、社会人となると、立場の違いが明確になり、雄一郎の周囲から別れろと圧力をかけられるように。
雄一郎はそんな声を歯牙にもかけませんが、麻子は「うちの会社、お金無くて迷惑になっちゃうから・・・」と別れを切り出しました。
案の定、「別れない」と粘られたものの、最終的には「諸々全てをどうにか出来る現金を作って帰ってくる」と言って去って行きます。
それから3年間、麻子は好きだった雄一郎を想いながらも1人で奮闘してきました。
そこへ雄一郎の帰還。
そして彼は麻子の会社を買い取ってオーナーとなり、立て直してくれます。
ここだけ見ると、スパダリがヒロインの苦境を救ってくれるお話のようであり、それは間違いではないです。
ただ、この話の特異なところは、雄一郎が麻子しか見えていない狂犬だということ。
誰が見ても完璧な御曹司で、他人に対しては容赦ないのに、なぜか麻子にだけ「ドM」。
麻子も普段は大人しめで強いことが言えないのに、なぜか雄一郎といるときだけ突如として「女王様モード」が発動して、冷淡な態度になり、ひどい言葉が口から出てくるのです。
そしてそれを聞いて「あいかわらず、最高の切れ味だ。俺は麻子の冷たい声と、蔑むような視線が忘れられなかった」とウットリする雄一郎。
麻子だけが好きで、麻子しか欲しくない雄一郎からポンポン飛び出る変態発言と、冷静な麻子のツッコミ。
全編に渡って、こんな2人の会話が出てくるのです。
自分のことしか見えていない狂犬に愛される苦悩と喜びがコメディタッチで書かれてるんですよね。
3年前、麻子が別れを切り出した時、2人の立場の差を弁えて、とか、取引先の令嬢から圧力をかけられて、とか理由でしたが、一番大きかったのは「雄一郎が自分のことを好きすぎて、自分のためなら本当に何でもやりかねないこと」。
麻子の敵を排除するために雄一郎はどんな汚いこともやってしまう。それが怖い。
だから別れたのに、こうして彼が目の前にいると、好きな気持ちが抑えられない。
でも「やっぱり一緒にいるのはダメ」と拒否しますが、「俺は約束を守って帰ってきた」と聞く耳を持たない雄一郎。
押し切られて一緒にいることに。
恋心ゆえに拒みきれず、身体を重ねるのでエロシーンもたっぷりあります。
雄一郎視点の章もあります。
1つは雄一郎と麻子の高校時代の話。
雄一郎が麻子しか見えなくなった理由や2人のなれそめが分かります。
2人の初めての夜のエピソードは、雄一郎が麻子を本気で大事にしているのが伝わってきます。
もう1つは、2人の想いが通じ合ってからのエピソードですが、麻子も常識人ぽいようでいて変なところがあることが分かります。割れ鍋に綴じ蓋。
勧善懲悪のスカッとスパダリ展開、エロ、コメディと3要素揃っています。
自分以外に懐かない狂犬ダーリンがお好みの方にオススメです!