著者 :水上涼子
イラストレーター:天路ゆうつづ
レーベル :ロイヤルキス
出版社 :ジュリアンパブリッシング
出版年月 :2022年3月
ジャンル :TL、ファンタジー
ヒーロータイプ:第三王子ながらクーデターで暴君を倒し皇帝となった覇気のある男
ヒロインタイプ:美と頭脳を兼ね備えた王女
Hシーン : 有り
あらすじ
ラトニア王国の美貌の第一王女アリーチェは悪女と名高い。いわく、「強欲で淫乱、金を積めば誰にでも体を許す」と。それらはとある人物によって作られた噂だが、アリーチェを貶め孤独にさせていた。今まで敵国であった大国オーランドと平和条約を結ぶことになり、父である国王から「黒狼陛下」と呼ばれるオーランドの皇帝オルウェイと結婚するように言われる。しかも条約を締結して帰国するオルウェイと一緒に明日出国するように、と。国王はオルウェイに対しても「娘には政治学と経済学をたたき込んでいるから参謀として扱ってくれれば良い」とお飾りの妃扱いをすることを暗に許し、娘をもらってくれることに感謝して涙を流す。一目で惹かれ合うオルウェイとアリーチェを阻むアリーチェの隠された過去とは・・・?
ネタバレあり感想
かなり長いお話ですが、山あり谷ありで飽きさせません。
上の「あらすじ」ではアリーチェの悪い噂を広める人を「とある人物」と書きましたが、序盤で、それはアリーチェにとって従兄弟にあたる皇太子であると分かります。元々は結婚すると思われていた二人に何があったのか。なぜ国王は皇太子が外遊している間にアリーチェを急ぎ出国させたのか。なぜ皇太子はアリーチェの悪い噂を流し、彼女を孤立させるのか。これがメインの謎となります。しかも後半まで皇太子が出てこないので「得体の知れない人物」として読者の気持ちもザワザワさせます。
そんなわけでアリーチェには「ふしだらな王女」という噂が流れていますが、一方のオルウェイにも「処女好きのロリコン」という噂が他国にまで流れています。皇帝オルウェイは無自覚ながらアリーチェに一目惚れして最初から溺愛モードなのですが、アリーチェは「彼はふしだらな私は好みじゃ無いはずだから外交的な溺愛演技だろう」と思って期待しないようにしています。
元々アリーチェは母国ラトニア王家が王族としての振る舞いに厳しく、王女としての仮面を完璧にかぶっている上に、皇太子に孤立させられ耐えてきたこともあり「大丈夫」を口癖にして本心を隠し、何でも我慢してしまうタイプ。どれだけオルウェイにワンコのように懐かれて嬉しく思っても信じ切れません。
そこへオルウェイの死んだはずの元婚約者が生きていると噂が立ち、そのガセネタとは分かっているが真実を確かめるためにオルウェイは遠征してしまいます。
いったん愛される喜びを知ってしまったが故に、婚約者が戻ってきたら捨てられる不安で精神的に不安定になるアリーチェ。
一方のオルウェイも「アリーチェはかつて王太子と婚約していたが破棄になった」という噂に「アリーチェは王太子のことが今でも好きなのか?」と疑心暗鬼になっています。そのため王太子の訪問予定を聞いて動揺するアリーチェを見て嫉妬が抑えられません。
互いを思いながら、真実を知るのが怖くてすれ違いそうだった二人ですが、最終的にはオルウェイの前向きさや度量の広さでアリーチェの心を解きほぐします。
そして明かされるアリーチェの過去。登場するヤンデレ(あ、言っちゃった)皇太子。いや、アリーチェにデレてないから単なるヤンか?ヤンは相当こじらせてるんですが、ヤン視点のストーリーもあるので、やってることはスーパー胸糞悪いのになんか単なる悪者に終わらないんですよね。
悪者探しをするならば、結局のところラトニア国王が悪いのでは?という気がしますが、アリーチェは「あの過去があったから今の幸せがある」と受け入れ、オルウェイと二人で前を向いて歩いていきます。
感想書いてきましたが、お話の展開が多すぎて、上記はほんの一部なんですよ。超オススメなのでとにかく読んで欲しい。
上記で触れてないんですが、オーランドに入国して3ヶ月隔離生活を送らされる期間のヒリヒリする展開も好きです。アリーチェが本当にかわいそうなんだけど、知能を生かして誇り高く一人で耐え抜きます。
綺麗で頭も良くて完璧なんだけど、つらい目にいっぱいあって、やせ我慢ばかりしてるようなヒロインがヒーローに溺愛されて幸せになるお話が好きな人はぜひ。