氷の瞳を溶かすのは ~冷酷騎士とおざなりの婚約者~(水上涼子,天路ゆうつづ,ロイヤルキス)

TL小説

著者      :水上涼子
イラストレーター:天路ゆうつづ
レーベル    :ロイヤルキス
出版社     :ジュリアンパブリッシング
出版年月    :2021年7月

ジャンル   :TL、ファンタジー
ヒーロータイプ:超美麗な顔の近衛隊長だが、眼光鋭く無表情で任務第一。
ヒロインタイプ:姉さん女房的で機転が利き、温かみがある。控えめで真面目。
Hシーン   : 有り

あらすじ

伯爵令嬢のサラにはかつて婚約者がいた。しかし、彼は弟マクシムの窮地を救ったことで前皇帝の不興を買い、隣国ラトニアとの戦争の最前線に送られ戦死する。出征前に自分が死んだら弟と婚約するように言い残され、サラは一つ年下のマクシムと婚約する。その後特に音沙汰も無く11年。皇子オルウェイがクーデターを起こし、マクシムは皇子の側近として前皇帝の一派を処刑台に送り、兄の敵を取った。サラは平和な世の訪れを喜び、今さら兄のお下がりの年上女など要らないだろう、と父に婚約破棄を申し出るが反対される。そうこうしているうちに新皇帝オルウェイから王都で王妃の侍女をするように呼び出され・・・。

ネタバレあり感想

先日記事を書いた「仮面の心を奪うのは ~黒狼陛下と噂の王女様~」の続編というか、同じ時系列の裏側になります。どちらから読んでも話は通じると思いますが、私は「仮面の心を奪うのは」の方を先に読むことをオススメします。こちらの作品にも「仮面の心を奪うのは」のヒロインの王妃アリーチェが出てくるのですが、アリーチェの抱える事情などを知らずにこちらだけ読むと「なんだろ、この王妃様」とあんまり印象が良くない気がするんですよね。些細なことですが。

さて、こちらの感想ですが、とにかくマクシムがねぇ・・・凍ってるんですよ。内面はサラへのマグマが滾っているのが周囲への言動から窺えるんですが、サラの前では一切見せない。

ただでさえサラは自分のことを「兄のお下がりの年上女」と自嘲していて、マクシムは責任感が強いから自分を捨てられないのだ、と思っているのに、久しぶりに会ったマクシムはサラの存在に気づいたそぶりも見せなかったので、「そんなに忘れられているのか」とショックを受けます。

氷の騎士と噂されるマクシムは、美貌の王妃アリーチェの護衛を務めていて、いつでも彼女につき従っているせいか、アリーチェの前ではほんの少し感情のゆらぎを見せています。サラはそんな2人の親密な様子に「マクシムが皇帝の信頼を裏切るわけがない」と信じつつも、彼が王妃に懸想しているのではないかと胸を痛めます。

マクシムとしては「兄が自分をかばって死ぬ羽目になったこと=サラの婚約者を自分が奪ったこと」を負い目に思っていて「自分はサラに恨まれている」と思っています。しかも、自分はクーデターの際にたくさんの人間を死に追いやっており、たくさんの恨みを買っているから、サラを巻き込んでしまうのではないか、と恐れています。本当はずっと安全な領地にいて欲しかったのに、まだ完全に落ち着いたといえない王都に皇帝オルウェイがサラを呼び出したことを怒っています。(オルウェイはマクシムにサラと幸せになって欲しくて仕組んでいるわけですが)

サラのことが心配でたまらないのに不用意に接触もできない。おまけに王妃の護衛として持ち場を離れるわけにもいけない。

そんなわけで、サラもマクシムと相手のことが気になりながら踏み出さず、心の中で悶々と悩んでいるので、全然進展しないです。超じれったい!ところどころマクシムが嫉妬しているシーンが無かったら「マクシムはいったい何考えてるの!!」とサラの妹と一緒になって怒りたくなります。

私のKindleでは全体の6割過ぎたあたりから急に話が動き始めます。事件が起こってサラが巻き込まれ、マクシムが助けにいくことで否応なしに二人の距離が縮まります。

その後は怒濤の甘さ。「マクシム、キャラ変?」と思うくらい、溺愛ダダ漏れ。

ダダ漏れになる前、二人が腹を割って互いの気持ちを伝え合うシーンは二人の真面目さ、誠実さが溢れています。マクシムがどれだけサラのことを欲していたか、本音で語るところがいいです。

10年以上もサラ一筋のお預けワンコだったらそうなるよね・・・というベッドシーンもあります。

互いを思いながらもジッと耐えていた二人が長い苦しみを経て幸せになる、そんなお話です。

「仮面の心を奪うのは」共々ぜひ読んでいただきたいオススメです。

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