著者 :ちろりん
イラストレーター:whimhalooo
レーベル :こはく文庫
出版社 :くるみ舎
出版年月 :2020年12月
ジャンル :TL、ファンタジー
ヒーロータイプ:23歳の侯爵、女性に恐怖心がある、素直で裏表がない
ヒロインタイプ:大人しく表情にとぼしい、表面上は冷静で理知的
Hシーン :やや有り
あらすじ
ヒロイン・グウィネスと侯爵セドリックは夫婦だったが、ある日セドリックが頭を打ってここ3年くらいの記憶を失ってしまう。女嫌いだった3年前に戻ってしまい、「お前は誰だ」「俺が結婚するわけない!」と混乱するセドリックにグウィネスは二人の過去を語りだす・・・
ネタバレあり感想
傑作では?
読み始めて数ページで「これは当たりの香りがする」と思い、最後までグイグイ引き込まれました。
話の構成がいいんですよね。
あらすじにある通り、夫・セドリックは階段から落ちて頭を打ったことにより、3年くらいの記憶を失ってしまいます。
それは、グウィネスと婚約してからの2年間を含む記憶でした。
そして、彼は極度の女嫌いだった頃に戻ってしまいました。
興奮したセドリックに「出ていけ!」と言われ、「分かりました」と出ていく支度をするグウィネス。
しかし、翌日、冷静になったものの、自分が女と結婚していることを信じられず、騙されているのではないかと疑うセドリックに説明を求められ、グウィネスは淡々と、2人が婚約者として出会ったところから結婚するまでを語ります。
婚約者として引き合わせられたものの、過去のトラウマから女性に恐怖心があり、拒絶するセドリックに対し、「そのままでいい」「無理をしなくていい」「自分が盾になって守る」と言って、何も求めず少しずつ歩んでいこうとするグウィネス。
自分をそのまま受け入れてくれる彼女の傍で、自分と向き合う努力をするセドリック。
途中トラブルもありながらも、2人は1年後に結婚までたどり着きます。
ここで過去の回想から現在に戻ってくるのですが「なぜセドリックは階段から落ちたのか?」「結婚した二人に何があったのか?」「なぜグウィネスはあっさり出ていこうとしているのか?」「グウィネスが抱える秘密とは何なのか?」という疑問が逆に湧いてきます。
この辺が巧みです。
まんまと興味をかきたてられました。
セドリックがグウィネスに対して心を開いていく過程がグッときます。
素直すぎて心配になるくらい。
彼の変化を喜びつつも、「自分は彼の役に立てればいい、それ以上を望んではいけない」とグウィネスがずっと自分を戒めているので、なんで彼女は一線を引いているのか、彼女の思惑は何なのか、と読者は気になってしまいます。
それも最終的には明かされるんですが。
ビターな風味なのに、最後は甘く終わるので、後味スッキリで超美味です。
興味を持たれましたら、ぜひご賞味ください♪