著者 :水上涼子
イラストレーター:逆月酒乱
レーベル :チュールキス
出版社 :ジュリアンパブリッシング
出版年月 :2020年1月
ジャンル :TL
ヒーロータイプ:イケメンで女にモテるが、前世を後悔し、運命の女の子を求めている。
ヒロインタイプ:婚約者から婚約破棄を求められた前世の記憶から自己肯定感が低い。
Hシーン : 有り
あらすじ
想いを寄せていた美しい婚約者から婚約破棄を申し入れられた前世を持つ加奈は、今世でも地味な見た目に生まれついたが、28歳の会社員として一人の生活を謳歌していた。ある時、ニューヨーク支社から日本人離れをしたルックスのエリート社員・中田が出張してきた。彼こそが前世の婚約者で、外見も全くそのまま。彼に前世の記憶が無さそうなことから関わらずにやり過ごそうとする加奈だが、中田は何かとちょっかいをかけてきて・・・?
ネタバレあり感想
以前ご紹介した「仮面の心を奪うのは」「氷の瞳を溶かすのは」を書かれた作者さんの小説です。kindleからオススメされたので読んでみました。
この作品は転生モノなんですが、ラノベによくある転生モノは現代の記憶を持ったまま、異世界に行くことが多いのに対し、過去の記憶をもったまま現代に転生します。
全体として面白かった・・・けど、TL小説を良く読まれる方の中には、「ヒーローは『一途童貞』(私が今思いついた造語ですが、ヒロインしか眼中になく、他の女と致したことがない男)じゃないと不潔!」と思われる方もいるので、そういう方にはあんまり好まれないかも・・・?
でも逆に、そういう方こそ、今作のヒロイン加奈の気持ちに共感できるような気もします。
他人事のように言いましたが、私も理想としては「ヒロイン以外には勃たない」と言い切る男が好きです。
しかし、今作のヒーロー・中田はねぇ、軽くて前世も今世も女が絶えないんですわ。
加奈には前世の記憶があり、その中で加奈は公爵令嬢リリアーナ、中田は伯爵家の次男ユーリでした。リリアーナは幼い頃に婚約者として紹介された美しい少年ユーリに一目惚れし、ずっと想い続けていましたが、周囲の令嬢たちから「ユーリ様に比べて地味」と容姿をけなされ続け、自信を無くし、ユーリの迷惑にならないように距離を置くようになっていきます。
その間にユーリは美しい男爵令嬢と親しくするようになり、ついにはリリアーナに「そちらから婚約を破棄して欲しい」と頼むのでした。
そしてユーリと会ったその帰りに、馬車の事故でリリアーナは亡くなってしまうのでした。
今世でも地味な日本人顔に生まれついた加奈は、両親の離婚もあって、恋愛に期待していません。堅実な会社員としてお一人様生活を謳歌しています。
そこにユーリの生まれ変わりの中田登場。
加奈は中田が前世の婚約者と一目で分かったものの、向こうは記憶が無さそうなので関わらないようにしたいと思っています。しかし加奈の名字が「田中」で彼が「中田」ということもあって、ハンコを借りに来たり、何かと軽く声をかけてくるので心がざわめいています。
しかも借り上げアパートの隣の部屋に越してきて、「加奈」と呼び捨てにしたりと、どんどん2人の距離が近づいてきます。
しかし、周囲からは地味な容姿のくせに中田と親しくしていると嘲られ、前世と同じような中傷をされます。
加奈も前世よりは強くなったので、周りの嘲りは受け流すことができても、中田が同じように思っているのでは?と思うと心が痛み、いつしかまた彼を好きになっている自分に気づいてしまいます。
私はてっきり、中田は最初から前世の記憶があって、加奈のことにも気づいてて、ちょっかいかけてるんだと思ってたんですけど、どうやらそうじゃないんですよね。
しかも、「大事に思っている子がいる」と言いながら「その子が見つからないから他で紛らわすしかない」みたいなことを平然というので「お、おまえ・・・!」と私の中の純情潔癖ガールが軽蔑しそうになりました。
ちなみに前世でも似たようなくだりがあり、「いや、そうだけど!男の身からしたらそうかもしれないけど!不潔よ!」と私の中の純情潔癖ガールが納得できずに暴れました。
とある出来事から「加奈が自分の探していた女の子だ」と気づいた中田が、加奈の信頼を取り戻すために奮闘するのが後半(今確認したら全体の7割笑)になりますが、前世と今世で不信感抱かれまくってるので、そりゃあすぐには信じてもらえないし、求愛に応えてもらえるわけもなく。
全て自分の身から出たサビと嘆きつつ、加奈を必死で愛する中田を見て、溜飲が下がるような下がらないような。
中田からの溺愛により、加奈が自己肯定感の低さを少しずつ回復し、中田との将来を考えられるようになっていくまでの道のりは中々長いです。大きい事件も起こりますしね・・・
しかし、加奈も前世のようにやられっぱなく、強くなっているので、中田に言い返したりして、二人のやりとりがテンポ良く、加奈視点の地の文もコミカルで飽きずに最後まで読めます。
己の行いを悔いたイケメンの必死の求愛を楽しみたい方(?)にオススメです。