眼鏡男子のお気に入り 茶葉店店主の溺愛独占欲 (西條六花,千影透子,蜜夢文庫)

TL小説

著者      :西條六花
イラストレーター:千影透子
レーベル    :密夢文庫
出版社     :竹書房
出版年月    :2022年7月

ジャンル   :TL、現代物
ヒーロータイプ:茶葉を取り扱うカフェ店主。メディアにも出ている。物腰穏やか。
ヒロインタイプ:イベント企画会社に勤める。内気で人と接するのが苦手。
Hシーン   : 有り

あらすじ

イベント企画会社で働く莉子は、ある雨上がりの日、いつもと違う帰り道の途中で、カフェの前で佇む店員さんが涙を流しているのを見かけてしまう。びっくりして見つめていると目が合い、気まずい思いをするが、その後、中国茶教室の講師として現れた彼と再会し・・・

ネタバレあり感想

王子様も伯爵も御曹司もエリートも出てこない、ごく普通の男女の恋愛物語です。
それだけなのに、すごく二人の想いが丁寧に描かれていて引き込まれてしまいます。

莉子は中学時代に男子生徒によるちょっかいが原因で女子からいじめられ、対人関係に苦手意識を持っています。そんな自分を変えたいとイベント企画会社に就職し、仕事を頑張っていますが、コンプレックスを克服できず、悩んでいます。

そんなときに、あらすじに書いたように通りすがりのカフェの店員さんとの出会いがあります。彼・守川響生はカフェを経営し、本を出版し、メディアにも出ているような人でした。

彼の涙を見てしまった気まずさからイベントで顔を合わせたものの、気づかれないといいな、と思っていると、彼から「この間、店の前で会いませんでしたか」と声をかけられてしまいます。
そして中国茶教室のイベントを熱心に聞いていたことから、今度カフェに来てください、と名刺を渡されるのでした。

そんな感じで二人の出会いがあって、恋が始まっていきます。
莉子と響生それぞれの視点から交互に語られていくのですが、誰かのことが気になって、つながりを求めて声をかけて、会話を重ねることで徐々に心を開いていく。そんな少しずつ進んでいく関係性を間近で覗き見ているような気持ちになります。

響生は元々、ある事情から、女性関係にのめり込むことが無く淡泊だったのですが、莉子のことは妙に気になっています。素直で真面目そうなところに好感を持っているのですが、イベントの時に声をかけた様子から内気で人と接するのが苦手なことを察して、いきなりガツガツはいきません。
店に誘ったり、店に来てくれたら店で定期的にやっているイベントを勧めたりして、彼女が負担に思わないようにスマートに近づいていきます。
こういうところ、女慣れしていて上手いなーと感心します。

そして二人に転機が訪れます。
莉子の会社に莉子のトラウマの原因である男性が中途採用で入ってきます。
大いに心乱れた莉子は気づいたら響生の店に向かっていました。
客商売で人を見るのに長けている響生は、莉子の浮かない顔に気づき、彼女の口から悩みを聞き出します。
そして、彼女の気持ちに共感し、そして「異性を前にしたときに緊張する癖を改善するために、男性に慣れる相手として立候補したい」と提案します。

こうしてお付き合いの始まった二人。
付き合いが深まるごとに、響生がどんどん莉子に惚れ込んでいって庇護欲の塊になっていくところがいいんですよね~まさに溺愛。
ベッドシーンでも大事に大事抱きます。
こういうシーンも描写が丁寧で、変な意味でなくリアルで、等身大の男女の感じがします。

その後も莉子とトラウマの原因とのトラブルとか、響生の方の事情によるすれ違いとかあるんですが、このお話のとても良いところは、二人が言葉を惜しまないところだと思います。
TL小説は得てして、言葉足らずから互いに疑心暗鬼になってすれ違いが大きくなっていくことが多いのですが、響生も莉子も相手に対する想いをきちんと言葉と態度にして示す誠実さがあります。
莉子は健気さから「響生さんに頼らずに頑張らなきゃ」と思ってしまう危うさもあるのですが、「もうダメだ」と判断したら相談しようという思考もあります。(タイミングが悪く上手くいきませんでしたが)
そういうところが読んでいてすごく安心するし、自分も見習わなくては、と思いました。

莉子がほっそりしてても巨乳とか、男性がそそられる感じする透明感とか、そういうところは「くぁ~、うらやまっ!」とひがみたくなりますが、自分が持ち得ないそれも、小説ならば自分が主人公。
知的で穏やかなイケメンに、甘く溺愛されるストーリーに没入したい方にオススメです!

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